Jazz Sommelier

ジャズ好きな著名人の方々が、TPOに応じて、
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他では読めないシチュエーション別ジャズ案内。
JAZZ SOMMELIER Vo.3

ソムリエ
谷川賢作


朝、目覚めの活力の2枚
『Tiki』リチャード・ボナ
『Alone / But Never Alone』ラリー・カールトン

『Tiki』リチャード・ボナ『Tiki』
リチャード・ボナ
『Alone / But Never Alone』ラリー・カールトン『Alone / But Never Alone』
ラリー・カールトン

谷川 ボナの『Tiki』は聴くと元気になります。

中野 『Tiki』は僕も愛聴盤の1枚です。去年のブルーノート東京でのライブは最高でしたね。アンコールのひとり多重アカペラに感動しました。歌いながらその場で何度も録音を繰り返してコーラスを作っていって。そのコーラスをバックに最後は歌いあげるという。その間、一度も途切れることなかった。

谷川 僕も行きましたけど、あれは鳥肌立ちましたね。間違いなく、僕のブルーノート体験の中でベスト3に入りますね。ボナは聴きやすいように感じられるけど、やっぱりピシーッと背骨がまっすぐでもの凄い音楽。サイドをかためてる奴らもすご腕ぞろい!

中野 これは入りやすいですね。

谷川 6曲目の「オ・セン・セン・セン」が好きです。

中野 これ、僕も大好きな一曲ですね。 

谷川 これは、聴けばとにかく元気になるってのがキーワードかな。一時期ベッドの傍のラジカセに『Tiki』とラリー・カールトンの『Alone/ But Never Alone』しか入れてなくて、朝起きた時に必ずかけてて。

中野 朝起きた時に、眠気覚まし用に聴くみたいな?

谷川 ボナは朝起きてのコーヒー。とにかくアドレナリンを沸騰させる。ラリー・カールトンが目覚まし代わりですね。

中野 ラリー・カールトンも朝っぽいですね。

谷川 とにかく朝これを聴いて、よし頑張るぞーみたいな(笑)。このカールトンのエコー感が不自然だったりするんだけどね。

中野 86年リリースか。関係ないですけど、80年代って無駄にエコー効かせてるものが多いですよね(笑)。

谷川 そうそう。不思議なエコー(笑)。

ピアニストで選ぶ、家路に聴くならこの一枚
『LARGO』ブラッド・メルドー・トリオ

『LARGO』ブラッド・メルドー・トリオ『LARGO』
ブラッド・メルドー・トリオ

谷川 やっぱり僕はピアノ弾きだからピアニストを選びたい。ジャズピアノとはこれじゃ!っていうのをね(笑)。ブラッド・メルドーにするかリチャード・ティーにするかで迷うな。

中野 メルドーはアルバムが出ると必ず買っちゃうピアニストの一人ですね。でもリチャード・ティーとはまったくタイプが違いますよね。

谷川 リチャード・ティーは学生時代のバップ以外の音楽を禁止されてる時代にStuffを観に行ったんですけど、この「A列車で行こう」をドラムのスティーブ・ガッドとデュオでやったですよ。鳥肌立ちました。(と、リチャード・ティーの『STROKIN'』収録「A列車で行こう」をかける)

『STROKIN'』リチャード・ティー『STROKIN'』
リチャード・ティー

中野 これも初めて聴きました。

谷川 昔の教会音楽のような音で。最初ピアノだけのカデンツァ部分が長いんですけど、ガッドが入ってきてからのリチャード・ティーの左手のこのグルーブ感。

中野 きれいな音。好きな音ですね。

谷川 教会で弾いてた人だからかな。あ、ドラム入ってきた。

中野 こういうのを聴くと、もう指の動きが見えてくるんですか?

谷川 見たいです映像。これはね、左手がすごすぎて判んないですよ。シンコペーションのタイミングが、なんでこんなに巧く右左のコンビネーションとれてるんだろう。

中野 すごいな、その聴き方(笑)。

谷川 うーん。リチャード・ティーより、やっぱりメルドーだな。で、今度はどのアルバムにするかは迷うところで(笑)。どれがきても文句なしだから。(とCDを物色し始める)

中野 (デューク・エリントンの『MONEY JUNGLE』を手に取って)このアルバムも好きなアルバムとして挙げる人も多いですよね。

『MONEY JUNGLE』デューク・エリントン『MONEY JUNGLE』
デューク・エリントン

谷川 でも意外なことにマイルス・デイヴィスがミスマッチだってけなしてるんですよ(笑)。この本読みました?

何と言えばいいんだよ?バカバカしい。こんなに音楽をXXXXするとはね。ミスマッチだ。お互いを全然助け合っていない。マックスとミンガスはふたりでなら演奏できるベースの鬼とドラムの鬼だからな。どころがデュークはこのふたりとは一緒には演奏できないし、ふたりもデュークとはできない。

「マイルス・デイヴィス・リーダー ダウンビート誌に残された全記録」フランク・アルカイヤー=編/上西園誠=訳より抜粋

中野 ああ、でもこれ判るなぁ。自己主張の強いふたりなんですよね、ベースとドラムが。

谷川 そうそう。でもそのせめぎ合いがすごいですよ。

中野 コレは必聴名盤です。

谷川 もちろん。これは文句なしの名盤ですよ。まあ、話はメルドーに戻って。やっぱりドラムが代わってからがいいかな。ホルヘ・ロッシーも好きだったけど。

中野 メルドーはドラムがジェフ・バラードになってからの方が僕は好きですね。

谷川 その前のホルヘ・ロッシーも悪くないけど、ちょっとバタバタしてた感じが否めないですよね(笑)。ジェフ・バラードになってからの『Day is Done』がイチオシ。

『Day is Done』ブラッド・メルドー『Day is Done』
ブラッド・メルドー

中野 そう!これはホント名盤です!ピアノトリオでこんなに興奮させられる作品もそう多くはないですよ。

谷川 1曲目がレディオヘッドの「Knives Out」で、この曲選びも素晴らしいじゃないですか。ポール・サイモンの「恋人と別れる50の方法」もやってるけど、原曲って聴いたことある?僕、原曲のドラミングが大好きなんですよ。

中野 スティーブ・ガッドですよね。ポール・サイモンってジャズ・ミュージシャンをよく使ってるんですか?

谷川 スタッフの連中が好きですね。だからリチャード・ティーもいるし。

中野 ガッドのドラムってスイングしてないっていうようなことを言う人もいますね。僕はそうは思わないんだけど。

谷川 判る。僕のAN時代もまねするなって。あのガットの4ビート。ハイハット1拍ずつ踏む4ビートはダメ!って(笑)。でも、真似したくてね(笑)。このスネアのツゥルツツッっていう。

中野 そういう聴き方って面白いなぁ。全然観点が違う。

谷川 いやいや。また話が脱線しちゃったけど、メルドーですよ。『Largo』にします!ジョン・ブライオンのオーバープロデュースで、ここまでプロデュースされたメルドーは、コレ1枚だけだと思うんだけど。ピアノの音色まで人工的にいじってる。

中野 ちょい実験的な試みがされた作品ですね。

谷川 僕はちょっとこういう情感のあるものが好きなんだな、きっと。ドライブするときは常にCDかかってますが、コレは僕にとっては安全運転な、家路につくBGMなんですよ。

中野 なるほど。

谷川 今日1日楽しくて、その楽しかったことに後ろ髪をひかれるんだけど、家帰って風呂入ってビール1杯っていうのもいいなーって(笑)。しかも渋滞してないっていう。

中野 いいですね。家路についたらこの一枚。

谷川 これはかなり実験的要素が濃いアルバムですが、安全運転のお供にどうぞ。

中野 いや~、メルドーはいいですよ。どのアルバムもいいです。それにしても今日はミュージシャン的な聴き方の話が聞けて面白かったですね。

谷川 いやあ、かなりマニアックな(笑)。

中野 いやいや、今まで対談してきた人ってリスナー側の人だから、ミュージシャンの観点での話は面白いです。今日はありがとうございました。



▼谷川賢作プロフィール
1960年東京生まれ。 作・編曲家。ピアニスト。
ジャズピアノを佐藤允彦に師事。演奏家として、現代詩をうたうバンド 「DiVa」ハーモニカ奏者続木力とのユニット「パリャーソ」、また父である詩人の谷川俊太郎と朗読と音楽のコンサートを 全国各地で開催。80年代半ばより作・編曲の仕事をはじめ、映画「四十七人の刺客」「竜馬の妻とその夫と愛人」NHK「その時歴史が動いた」テーマ曲等。
演奏会などのスケジュールは公式HP http://tanikawakensaku.com/


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