『パリ・コンサート』中野 じゃあ本題に入って、ジャズソムリエとしておすすめをお願いします。
谷川 まずね、私はどうしてもキース・ジャレットに影響を受けているようです。たぶん友達にはなれないとは思うんだけど(笑)、やっぱり深く感銘を受けてしまう。
中野 僕も大好きです。
谷川 世の中はキースといえば『ザ・ケルン・コンサート』という風潮に反旗を翻したいんです。それでおすすめしたいのが『パリ・コンサート』です。これ、たぶんセールス的には『ザ・ケルン・コンサート』の何十分の一くらいしか売れてないでしょうね。
中野 そうですね。
『ケルン・コンサート』谷川 うんうん。これはバッハ的なパッセージから始まるんですけど、僕はこういう進行が好きで、それでそれが生き物のように変化していく。
中野 バッハ的というのはどういう展開のことを指すんですか?
谷川 半音進行のベースライン、それにともなう厳格な和声進行。バッハを聴いて弾いて研究して、その上のインプロビゼーション!これはキース・ジャレットを『ザ・ケルン・コンサート』だけだと思っている大多数の人に聴いてほしいですね。
谷川 でも、本当にね、成長してます。ひとりのアーティストの進化、発展というのが如実に表れています。
中野 これは『ザ・ケルン・コンサート』よりもかなり後のソロですよね?
谷川 『ザ・ケルン・コンサート』が78年で、これは88年だから10年後です。
中野 僕ももちろんこれ持ってるんですけど、あまり聴き込んでないんですよね。つい『ザ・ケルン・コンサート』とか『ヨーロピアン・コンサート』とかあの辺を引っ張り出して聴いちゃうんですよ。
『C dur』
『ノクターン』谷川 『C dur』はあまりにも入手困難なんでどうかなと思ったんですけど、惚れ込んでます。
中野 初めて見ます、このアルバム。
谷川 これは山口和与さんと宮野裕司さんの作品で。『C dur』って調性のCメジャーのことなんですけど。とにかく二人で素朴な会話をしている。しかも饒舌にならない。一人がぼそっ。すると相手がまたぼそっ。男の会話だなあ。すばらしい。
中野 ベースとサックスのデュオって珍しいですよね?
谷川 珍しいです。これはね、カレーを食べ終わったあとにはこれでしょ!っていう(笑)。
中野 涼しい感じですね(笑)。
谷川 そうそう。カレーを食べたあとに、ジョン・コルトレーンなんて聴いちゃったら、汗がドーンと出そうだけど。
中野 これは汗が引いていく感じ。
谷川 あとね、これ大好きなんです。
中野 チャーリー・ヘイデンの『ノクターン』ですか。
谷川 これはゴンサロ・ルバルカバが参加してるんですよ。ゴンサロはあまりにバカテクで弾きまくり男なので、もう聴くのをやめようと思ったんですけど、これを聴いた瞬間ノックアウトされました。ものすごく美しいですこのピアノ。
中野 このアルバムも聴いてないので早速探します(笑)。
谷川 ラテン・バラードが主体なんですけどね。このバイオリンが素晴らしいんですよ。
中野 (クレジットを見て)フェデリコ・ブリトス・ルイス?
谷川 全然知らない人なんですけど。これもカレーの後、いけるんじゃないかな(笑)。夜に縁側でっていうのも合うと思います。