林家 最後にもう1枚。これはブルーノートで何がお好きですか?って訊かれた時のために。
中野 ウェイン・ショーターって、もう76歳なのに今も現役バリバリですよね。しかもずっとアグレッシブ。
林家 ですね。中でも『NIGHT DREAMER』はものすごくいいですね。「Black Nile 」も入ってるし。
中野 これは超名盤ですね。
林家 でね、3曲目に入ってる「Virgo」なんですよ。バラッドの中で何が好きかって言われたら「Virgo」。ものすごく切ないですよ。恋をしてる切なさが溢れんばかりで。ブルーノートといえば『ソウル・ステーション』だ『ロール・コール』だといろんな名盤がある中で、最終的に1枚だけしか持ってちゃだめって言われたら、これ。
『ソウル・ステーション』
『ロール・コール』中野 ウェイン・ショーターはまだまだジャズを進化させようと新しくカルテットを結成したりして、若いの世代からもカリスマ視されてますね。
林家 ねぇ。ハービー・ハンコックとこの人はもうカリスマでしょ。
林家 本当はね、まだまだ紙袋3つ分くらい持ってきたいものはあったんですよ。ジェフ・テイン・ワッツだけでそろえて持ってこようかと思ったり。
中野 あぁ、最新作の『WATTS』は最高ですね。
『WATTS』林家 いいですねぇ。テレンス・ブランチャードと、ブランフォード・マルサリスが参加してるやつね。ジェフ・テイン・ワッツが、僕好きで。風神雷神の雷神様みたいじゃないですか(笑)。
中野 ジェフ・テイン・ワッツはブランフォードの新譜(『METAMORPHOSEN』)でもかなりいいですね。
『METAMORPHOSEN』林家 ああ、あの緑色のジャケの。僕はあのピアニストが好きなんですよ。ジョーイ・カルデラッツォ。ブルーノートに来た時は全公演行きたかったくらいで。結局1回だけ行けなかったんですけど、あとは全部見ました。泣くんですよ、僕。
中野 カルデラッツォはきれいな旋律を弾きますよね。
林家 いいですね。でも僕ね、今誰をライバルにしたいかって思ったら、ブランフォード・マルサリスなんです。年代もたぶん一緒で、今のジャズをやろうっていう感じがあって、彼なりの解釈でコルトレーンの「至上の愛」をやったじゃないですか。そういうのが、古典落語をやりながらも今の古典落語でいたいっていう僕の思いと重なるんですね。
中野 なるほど。よくジャズはフォービートでなきゃいけないみたいに凝り固まってる人がいますけど、僕も今が感じられるものでないとただの懐古趣味なだけで、つまらないと思います。そういった意味でもブランフォードは好きですね。
林家 ブランフォードはお兄ちゃんで、ウィントンが弟でしょ?うちにも弟がいるから、その辺の微妙な関係もね(笑)。
中野 でも選曲してもらうとおもしろいですね。自ずと傾向が出でくる。
林家 こうやって並べると、結局根暗なアルバムが多いなぁ。ジャズ好きは、根暗が多いです。
中野 多いですね(笑)。
林家 明るいジャズ好きって僕、信用できないんです。意固地、頑固、へそ曲がり。卑屈。そんなのじゃないと。あははは。
中野 そもそもそういうタイプが好きになっちゃうジャンルなんですよね(笑)。
▼林家正蔵プロフィール
1962年 12月1日生まれ、東京都出身。1978年に父親である林家三平に弟子入り。1988年、最年少で真打ちに昇進。2005年に九代目林家正藏を襲名する。ジャズ通で知られ、著書「知識ゼロからのジャズ入門」(幻冬舍)もある。落語会などの詳しいスケジュールは公式HP「蔵の塩梅」