Jazz Sommelier

ジャズ好きな著名人の方々が、TPOに応じて、
ぴったりのジャズアルバムをセレクト。
他では読めないシチュエーション別ジャズ案内。
JAZZ SOMMELIER Vo.1

ソムリエ 林家正蔵
前編


林家 今は吉祥寺のディスクユニオンに大野くんという担当の方がいて、いいものがあると情報をくれるんですよ。中古盤を漁ってて知らないのがあると訊いたりね。今、ヨーロッパとかになると訳わかんないじゃないですか。

中野 名前も覚えづらいし(笑)

林家 で、今は時間もそんなにないので買ってみてガッカリなのはすごくロスだな、と。大野くんは好みも知ってくれてるので、2〜3ヶ月に1度吉祥寺に行ってまとめて買ってきてますね。

推理小説をお読みの時におすすめのBGM
『SOLARIUS』ロルフ・キューン・クインテット

『SOLARIUS』ロルフ・キューン・クインテット

中野 それでは本題のジャズソムリエとしておすすめして頂きたいんですが。

林家 はい。まずは推理小説に相性のいい1枚を。僕、推理小説が好きなんですよ。で、推理小説とジャズはものすごく相性がいいんですね。これは例えばお好み焼きにマヨネーズというか、エビフライにタルタルソースというか。すごい相性がバッチリなんです。で、その中でもいろいろ試したんです。ミッキー・スピレインみたいな判りやすいハードボイルドなものだとなんでも合うんですよ。でも、ちょっと知的で和のものでも洋のものでも合う1枚、という究極のものをという場合には、こちらのものでいかがでしょうか。

中野 ロルフ・キューン・クインテット『SOLARIUS』ですか。これはまた渋い。長く廃盤で手に入らなかったですよね。最近再発されて、僕はそれで買ったんですよ。

林家 そうです。僕は再発の中古で買いました。ロルフ・キューンはクラリネット奏者で、最初はクラリネット?っと乗り気じゃなかったんです。でもこれを買ってたまたま本を読むときに流してたら、本が勝つか音が勝つかというちょうどいい案配で。兄貴のクラリネットが刑事で、弟のピアノの狂気な部分が犯人なんですね。

中野 なるほど。ロルフの弟であるピアニストのヨヒアムとの演奏が推理小説のスリルと相性がいんですね。

林家 ええ。推理小説好きの方にはおすすめのBGMとして是非。狂気の部分といい知的な部分といい、叙情的な部分といい、躍動感といい、すべての意味で私はおすすめです。

濃厚なライブを体感したい時にはこの2枚。
『LIVE AT TONIC』クリスチャン・マクブライド
『OUT OF NOWHERE』ジェイムス・カーター

『LIVE AT TONIC』クリスチャン・マクブライド 『OUT OF NOWHERE』ジェイムス・カーター

林家 続いては、ライブに行きてぇなぁっていう時はないですか?しかもブルーノートやコットンクラブなんかのお洒落で美味しいものが出て、というのではなく昔のPIT INNのような、ブラックな人たちが怪しげでゴリゴリにやってるところに行ってみたいけど行けないという、その隙間を埋めてくれるような。そんな鬱憤を晴らしてくれる。しかもものすごくドロドロのGIG。

中野 ああ!クリスチャン・マクブライド『LIVE AT TONIC』。これ、いいですね。僕も愛聴盤です。これは3日間夜通しでやったライブを収録した3枚組ですよね。よくこんな濃いライブをずっとやり続けてたなぁと思って(笑)。

林家 しかも、もの凄く、おかまいなくダラダラやってるじゃないですか(笑)。僕はこういう泥臭いブラックミュージックみたいなのが意外と好きなんですね。

中野 これを聴いて、無性にニューヨークのこのライブハウスに行ってみたくなりました。でもTONICって、閉店の危機があって有志たちのドネイションで乗り越えてやってたみたいなんですけど、2年前に結局不況の波に飲まれて閉店しちゃったみたいです。

林家 そうですか。こじゃれたデートに使うようなところも素敵ですが、末広亭や池袋演芸場で聴く噺の方が面白いし、すずなりで見る芝居の方が面白いんですよね、やっぱり。

中野 その方が濃密な感じがしますね。本来ジャズはそういうものだし。

林家 はい。そんな感じを体感したい時におすすめです。それともう1枚、僕の好きなジェイムス・カーター『OUT OF NOWHERE』をおすすめしたいのですが。これはね、ギターのジェイムス・ブラッド・ウルマーと、バリトン・サックス吹きのハミット・ブルーイットとやっててね、もう鮒寿司みたいな(笑)。

中野 ははは。こってりとした感じなんですね。

林家 ジェイムス・カーターはサックス吹きなんですけど、この人も変わり者ですよ。

中野 日本ではあんまり注目されてないですよね。僕は『Jurassic Classics』が好きで。中でも「A列車で行こう」がゴリゴリと吹きまくってて最高なんですよ。

『Jurassic Classics』ジェイムス・カーター『Jurassic Classics』
ジェイムス・カーター

林家 この人は当たり外れが大きいんですけど、僕はものすごく大好きで。日本でもたまに小さなライブで来てたりしますよ。今、デヴィッド・マレイが一般的に認められてますけど、僕はどちらかというとジェイムス派。

中野 この一枚は持ってないので、僕も早速、手に入れます。


ARCHIVES

Vol.1 林家正蔵 前編
Vol.1 林家正蔵 後編
Vol.2 谷川賢作