90年代NYジャズ・シーンから
現在への系譜を語る!


早熟な男アーロン・パークスと
ドラムで歌うブライアン・ブレイド

中野 11月、丸の内コットン・クラブでのアーロン・パークスのライブの時に、四浦さんとバッタリお会いして。この時のライブでは、アンコールでベタにスタンダードをやってましたね。

四浦 アンコールで「エアジン」演ってましたね。途中で「コン・アルマ」も演ってました。これなんかすぐ上の世代がさんざんやりつくしてきた曲ですが、ちゃんと継承してますよという。

中野 ベタ好きな日本人用のサービス精神でやったという見方もある。

四浦 あと今回はアルバムで叩いていたエリック・ハーランドは不参加だったのですが代わりにヨッヘン・ルッカートを帯同してきたので、また別の意味で十分に楽しめました。丁度、カート・ローゼンウィンケルのバンドのリズム・セクションとしてアーロンとハーランドのときもあればアーロンとヨッヘンのときもあったようですので、その違いが実体験出来たというか。個人的にはヨッヘンとベースのマット・ペンマンのコンビネーションを直接ライブで観たいと前々から思っていたので嬉しかったです。

中野 アーロンの生演奏は初めて観たんだけど、生の凄みはあまり感じなかった。ま、僕が肉体的な熱い演奏を好む傾向にあるってこともあるんですけど。

四浦 ああいうのが彼らのスタイルなのかもしれませんよ。あんまり熱くならないというか。彼ら超優等生チームですから。そんなアーロンはさらに群を抜く優等生で学業でも14歳で大学に入学したという天才で、16歳で既にリーダー・アルバムも作っています。でもそれらの作品に対して本人は穴に埋めたいとか言ってるみたいですけど。世代でいうと山中千尋ケンドリック・スコットウォルター・スミスラージュ・ルンド等と同じですが、年齢でいうとクリスチャン・スコットマット・ブリュアーマーカス・ギルモアエスペランザあたりと同じぐらいでしょうか。実際、クリスチャンの『アンセム』にアーロンは参加しています。

『アンセム』クリスチャン・スコット『アンセム』
クリスチャン・スコット

中野 僕はクリスチャン・スコットやエスペランザにも最近、ハマってます。やっぱり、その世代に面白い人が多いですね。スコットはマイルスを彷彿とさせる佇まいがあるし、今後、人気が出る感じがしますね。

四浦 『アンセム』の1、3、8、12曲目で感じられるムードというか、それらでアーロンが演っているピアノ・リフ。これかっこいいんですけど。ここで掴んだこの感じをアーロン本人が今回ブルーノート・レーベルから出したメジャー・デビュー作の『インヴィジブル・シネマ』の3曲目とかでも演ってたりするんですよ。そういうところが偉いですよね、自分たちの世代の音というかムーブメントやスタイルを作ろうとしている感じが。そんなアーロンが注目を集めるきっかけとなったのはやはりテレンス・ブランチャードのバンドへの参加だと思います。

『インヴィジブル・シネマ』アーロン・パークス『インヴィジブル・シネマ』
アーロン・パークス

中野 最近、テレンスは若い人をどんどん起用して一緒にやっていこうという動きが多いみたいですね。

四浦 90年代終わりくらいまではそうではなかったです。テレンスはドナルド・ハリソンとの双頭バンドを終わらせると新たなレギュラー・バンドを作り、少しづつメンバー・チェンジを行ってきていましたが、03年の『バウンス』リオネル・ルエケロバート・グラスパー、アーロン・パークスら若手を大量に起用した大幅なメンバー・チェンジを行いました。05年のハービー・ハンコックをプロデューサーに迎えた『フロウ』でドラマーにケンドリック・スコット、ベーシストにデレク・ホッジを起用し、テレンス本人もこの新たなメンバー探しにけりをつけたと言っていました。また彼はスパイク・リーなどの映画音楽の仕事もこなします。そういった音楽にも対応できる優秀な人材を探していたのでしょう。

『バウンス』テレンス・ブランチャード『バウンス』
テレンス・ブランチャード
『フロウ』テレンス・ブランチャード『フロウ』
テレンス・ブランチャード

中野 僕は彼のカサンドラ・ウイルソンダイアン・リーヴスダイアナ・クラールジェーン・モンハイトをフィーチャーしたジミー・マクヒュ曲集の『レッツ・ゲット・ロスト』ってアルバムが好きで。

『レッツ・ゲット・ロスト』テレンス・ブランチャード『レッツ・ゲット・ロスト』
テレンス・ブランチャード

四浦 その作品まではピアノはエドワード・サイモンが担当していました。若手への入れ替えはそのすぐ後ぐらいですね。アーロンはテレンスのバンドに参加し、クリスチャンのバンドでもやっていた。更に何とあのカート・ローゼンウィンケルのバンドにもいるんですよ。

中野 カート・ローゼンウィンケルって、日本ではあまり話題に挙がることは少ないですよね。

四浦 はい。でも凄いんです。もう一度言いますね。カートは天才です。現代ジャズを語るうえで彼は絶対に外せません。兎に角、アーロンは現代ジャズを語る上でとても重要な3つのグループ全てに参加しているという事実が彼の存在意義を相当凄いものにしていますね。

中野 早熟なんだなぁ。でも新作の『インヴィジブル・シネマ』でようやく日本でも注目されてるという感じがありますね。

四浦 そうですね。先ほどのカートの知名度や今、中野さんが言われたアーロンの情報も、ここ日本での不足感は確かに否めません。そういったシーンの状況を伝える媒体が全く無いですから仕方ないことなのですが。CDなどのフォーマットにのった音楽とコンサートを含めたライブの音楽、その両方の批評を含めた情報をバランスよく伝えることは商業的には無理ですからね。

中野 ライブといえば、前回の対談で話したブライアン・ブレイドのライブも行きましたよ。あんまりお客さんは入ってなかったけど、技術がめちゃくちゃ凄くて驚いた。

四浦 さっきの話でいうと、彼は完全に音楽家でもある。

中野 普通ドラムの音が点だとしたら、彼のは線。こんなドラム聴いたことないって興奮しました。CDで聴いた以上に、ライブで聴くとその凄さが判りますね。いやぁ、あれはスゴイ。

四浦 彼は一番です。「歌う」ドラムなんですよね。ドラムだけで曲になる。

中野 ピアノみたいに音階があるドラムに聴こえたんですよ。あれは不思議な体験だったなぁ。

四浦 それを1回体験すると彼の追っかけになっちゃいますよ。

中野 確かに、あの凄さは追っかけたくなりますね。


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