中野 四浦さんはいつ頃からジャズを聴き始めたんですか?
四浦 僕は9歳から聴いています。
中野 9歳!それは親の影響とか?
四浦 うちの兄が中学校3年生になった時にジャズを真剣に聴くようになって。僕は5つ下だから9歳頃から一緒に聴くよう になったんです。
中野 僕は15歳からで早い方だと思ってたけど、9歳は凄いなぁ。
四浦 それまでガンダムや西部警察のサントラとかをステレオで聴いていたのでそれがジャズに代わっただけなんで、そんなに違和感はなかっ たんですよ。サントラってわりと器楽曲だったから(笑)。
中野 なるほど。最初に聴いたのは何だったんですか?
四浦 父親が持っていた(アート・ブレイキー)『モーニン』というアルバムをキッカケに兄がジャズを聴くようになって、それに便乗するかたちです。また自分の小学校の前にお兄さんがクラシック専門、弟さんがジャズ専門っていうレコード屋さんがあったんです。入り口にはヒット・チャートが置いてあるんですけど、その奥にはクラシックとジャズのコレクションがあって。そこに学校の帰りに足しげく通いました。また家がジャズ喫茶という同級生もいました。
中野 それはうらやましい環境だなぁ。僕はド田舎だから、ジャズ喫茶どころか、喫茶店さえなかった(笑)。
四浦 現在、私はディスクユニオンというCDショップで働いているのですが、実家に帰省した際にそのレコード店が閉店するということで、会いに行ったんですよ。そしたら実は、そのお店の方もディスクユニオン出身だったんですよ。それにはびっくりしましたね。
中野 それは凄い!四浦さんは最初にハマッたのは?
四浦 それはブルーノート・レーベルを中心とするハード・バップ全般ですね。その頃、楽器に興味を持ちはじめトランペットを吹くようになったんです。それで憧れのトランペッターが出来て、その人のアルバムを全部集めたりとか。
中野 マイルス・デイビスですか?
四浦 僕はケニー・ドーハムに夢中になりました(笑)。マイルスはいちトランペッターというよりはいち音楽家という感じで聴いていました。
中野 それ、小学校の時でしょ?早熟過ぎますよ!
四浦 いや、だから漠然と、です。もちろん自分で楽器をやるのはすぐに諦めましたけど。
中野 東京にはいつ出て来たんですか?
四浦 高校を卒業してすぐにです。東京に来てからは本当、色んなジャンルのライブに足繁く通いました。そうこうしているうちに3年が経ったあたりでディスクユニオンに勤め始めました。
中野 じゃあディスクユニオンは長いんですね。
四浦 もう13年目です。最初は渋谷の宇田川交番近くの店にいて。そのうち支店ごとに予算の違いがあって、いちばんお金が潤沢にある支店だと好きなものを仕入れることができると判明したので「移動していいですか」と。バイトなのに(笑)。それからは新宿店にいます。
中野 僕は新宿店にはずっと通ってますよ。きっと、知らないうちに会ってるんですね。
四浦 僕はこうやってお知り合いになる前に見かけたことありますよ。 ふわ~っと店に入ってこられて、CDを重ねて買ってらっしゃる姿を(笑)。
中野 欲しいと思ったらすぐに買っちゃうのが、僕の悪い癖なんです(笑)。実はこの対談は、そんな僕に最先端のジャズに詳しい四浦さんから新しいミュージシャンを紹介してもらおうと思ってて。毎回3~4枚紹介してもらって、その中から気に入ったものをこの場で買ってしまおうという(笑)。
四浦 どれを買ってもらえるかの駆け引きを楽しむわけですね。これからの僕の中でのルールとしては、ジャズの中でもアメリカのものに重点を置いて、今ライブが観られる人、その条件下の新譜で素晴らしいものにしようと思って。さらにハードルを上げて、15年経っていわゆる名盤になっているだろうというものを選んできました。
中野 あ、それはいいですね。
四浦 商売を考えると、本当は今売らなきゃいけないものを紹介しなきゃいけないんですけど(笑)。でもまず言っておきたいのは、少しばかり批評精神に立ち返って、決して消費者ガイドにはならないよう、そういう視点で紹介するのは避けようと思っています。
中野 なるほど。消費者ガイド的な作品紹介はジャズ雑誌なんかを見れば載ってますからね。
四浦 はい。もうちょっとアカデミックな方向で。ミュージシャン寄りの聴き方かもしれませんが、これから一流のミュージシャンになろうと頑張る若いミュージシャン達のお手本となるのは誰の何という作品なのかというような感じでいこうかと。
中野 演奏の最先端ということですね。それは具体的にどういうことですか?
四浦 ジャズの歴史を十二分に踏まえながらも、今という時代を反映させた音楽ということでしょうか。今、ジャズには伝統芸能保存派が増えてると思うんですよ。ジャズって常々変化するはずの音楽だったのが、ブルースとかと同じ状況に向かっていると思うんです。ある決まった形で演奏すればジャズだという風な。
中野 なるほど、なるほど。
四浦 今はそういうジャズのスタイル継承に重点を置いた方々が重宝されてきていて。ケニーバロンとかはレジェンドとかいわれますけど。ハービー・ハンコックより年下ですからね。だからケニー・バロンのようになりたい保守派か、ハービー・ハンコックのように常々新しいことにチャレンジしていく革新派か、どっちになりたいですか?っていう。
中野 僕は節操なくどっちも聴くんですよね。
四浦 それはごもっともだと思います。どちらが悪いということではないですから。