四浦 前回の対談のあと何度かライブ会場でお会いさせていただきましたが、色々と行かれてるようですね。
中野 けっこう行ってますね。パット・メセニー、チック・コリアとジョン・マクラフリンのファイブ・ピース・バンド、グレッチェン・パーラトにレベッカ・マーティンなどなど、もう全部押さえてます(笑)。
四浦 アルバムとライブを同時進行で体感するとそのアーティストの本質がより解りますよね。
中野 最近、よくグレッチェンが参加してるアルバムに出くわすんだけど、NY系のジャズを聴くと彼女が参加してることが多いですね。
四浦 たぶんうち(ディスクユニオン新宿JAZZ館)で買って頂いたフランシスコ・ペイスの作品のことだと思いますが。うちで大量買いをされた時に買ったCDの何枚かに彼女が参加してたと思います。それくらい彼女の参加率は高くて。
中野 彼女目当てで買った訳ではなくて偶然、彼女のボーカルが入ってることが多くて驚いてます。
四浦 グレッチェンは既にミュージシャンズ・ミュージシャンという感じでしょうか。同世代のミュージシャンが彼女を使いたくてしょうがないのでしょう。
中野 彼女の歌は楽器的でリズムが独特ですよね。
四浦 そうですね。声質などはポップスのフィーチャリング・ボーカリストのような現代の音楽シーンに実によくマッチするそつのない感じだったり、ボサ・ノヴァ系を歌うジャズ・シンガーのようであったりするんですけど、ただそれだけじゃなくてメロディを声を使って器楽的に歌う完璧なテクニックを持っているんですよ。
中野 ブランフォード・マルサリスの新譜『METAMORPHOSEN』も面白かったですね。それ以上に面白かったのが、ジェフ・ワッツ。あれは非常にいいアルバムですね。大傑作だと思います。
『METAMORPHOSEN』四浦 ですね。ジェフ・ワッツの作品はフロントにブランフォードだけでなくテレンス・ブランチャードも迎えてますので豪華ですよね。一聴したときのインパクトは確かにジェフの『WATTS』に軍配が上がりそうですが、ブランフォードの『METAMORPHOSEN』って聴けば聴く程に凄さが増していくというか、彼のレギュラー・バンドを核に現代ジャズの最前線を全て網羅しようとしているというか、かなりチャレンジングな作品だと思うんです。今回はその辺のアルバムをおすすめしようと持ってきたかったんですけど、すでに中野さんが買われていったので(笑)。
『WATTS』中野 この対談を始めた頃はベタなジャズを主に聴いてたけど、最近この辺りを知るようになって、聴き方がホント変わってきてますから。
四浦 ライブとリンクして聴くとアルバムもさらに深く楽しめちゃいますよね。
中野 そうなんですよね。だから今はライブでも体験できる現在進行形の最前線のジャズが面白くて仕方がない(笑)。
四浦 本日はジョシュア・レッドマンのブルーノート東京での公演をご一緒させて頂きましたが。いいライブでしたね。
中野 良かったですね。ブライアン・ブレイドのドラムだともっと良かったかもしれないけど、グレッグ・ハッチンソンも予想以上に良かった。一度ブライアン・ブレイドを体験しちゃうと、もうあれを求めちゃうんですよね。グレッグも決して悪くないんだけど、やっぱりブライアン・ブレイドがスゴイから。
四浦 ですよね。あの曲はブライアンが叩いたらまた別の展開になっていただろうなとか、勝手な脳変換で聴いちゃって(笑)。もちろん、グレッグのスイング感とか半端無くカッコ良かったです。曲がブレイクして、そこから4ビートのパターンに移っていく瞬間などゾクゾクするというか。
中野 僕、ジャズってある意味、大喜利だと思うんですよ。テーマが出されてこのテーマであなたたちどうボケますか?という(笑)。サックスがボケました、ピアノがボケました、それで一通り全員ボケて、最後はみんなでお題を復唱して終わり、みたいなことじゃないですか(笑)。
四浦 判ります。ジャム・セッションでソロをどんどん回していくのは、答えはなんだろう、絶対に最高の答えが存在するんだけどまだみんなそこに辿り着いていないっていう状態のようですよね。
中野 でも最近のピアノ・トリオとかに多いですけど、今はソロとか回さずに、インタープレイ的に全員がずっと演奏し続けるじゃないですか。もうソロを回していくのは古いっていう風潮はあるんですか?
四浦 曲調によるんじゃないですかね。例えば今日ライブでも演っていた、アルバム『COMPASS』の2曲目 「Faraway」とかはテーマのメロディがリズムを強く内包しているのでサックスもベースもパターンをキープしやすい楽曲じゃないですか。そうなるとドラムスがリズムのキープという役割から解放されるじゃないですか。そうなるとわざわざソロを渡さなくても楽曲中で好き勝ってに叩いてもありになるというか、ずーっとソロみたいな状態で叩けるというか。当然、各楽器のプレイヤーが各々、物凄い技術力と共にスイングできることが条件なのでしょうが。
『COMPASS』中野 なるほど。