織戸 次はジョー・ヘンダーソンの『ページ・ワン』。この人も新主流派のテナーサックスで、1曲目の「ブルー・ボッサ」が有名な曲。だからジョーのなかで最もリクエストが多いレコードだね。
中野 これは初リーダーアルバムなんですね。
織戸 そう。この「ブルー・ボッサ」がこの人の中でいちばんキャッチーな曲で、誰にでも親しまれる可能性がある。この人は一般受けはあまりしなかったけども、ミュージシャンに尊敬されるタイプ。アドリブとかのフレーズがすごくミュージシャン受けするモダンなもので。そのかわり一般に判りづらいという印象があったのかもしれない。でも晩年80〜90年にかけていい仕事をしたよね。ヨーロッパのバーヴというレコードレーベルに認められて、ずっとリーダー作を出してた。中野さんはジョー・ヘンダーソンはあまり持ってない?
中野 いや、これはもちろん持ってます。ほかは晩年のものが多いような気がします。
織戸 やっぱりCDになってからね。
中野 そうですね。ピアノのマッコイ・タイナーも僕大好きで。すごいパワフルにピアノを弾く人。
織戸 70年代から80年代にかけては一斉を風靡したからね。『サハラ』とかね。
『サハラ』中野 『リアル・マッコイ』とか長く愛聴盤ですね。
『リアル・マッコイ』織戸 名盤だね。あれは素晴らしい。この『ページ・ワン』よりちょっとあとのブルーノートの傑作だよね。後期のマッコイ・タイナーは派手すぎてあまり好きじゃないっていう人は、『ザ・リアル・マッコイ』あたりになっちゃうよね。
中野 マッコイ・タイナーはコルトレーンとよくやってましたよね。
織戸 そう、コルトレーンのピアニストだったから。
織戸 次は、ウェイン・ショーターの『ナイト・ドリーマー』。
中野 『ナイト・ドリーマー』がいちばん好きだっていう人多いですね。林家正蔵師匠もいちばん好きだって言ってました。
織戸 これはすごく雰囲気があってね。普通のハードバップのようなジャズの流れじゃなくて、なんか不思議な雰囲気。スタンリー・タレンタインに『ブルー・アワー』っていうアルバムがあるんだよね。俺の想像なんだけど、その雰囲気をモダンなスタイルで再現しようとしたのがこの『ナイト・ドリーマー』なんじゃないかなと思うんだよね。『ブルー・アワー』もすごく不思議なアルバムで。
『ブルー・アワー』中野 そうですよね。
織戸 淡々とした、抑えたエロティックな雰囲気があるんだよね。デビッド・リンチの映画のような。激しく吹いてるようで、どこかクールで。
中野 この人は今や若手ミュージシャンたちのカリスマですよ。
織戸 でもウェイン・ショーターは才能がありすぎて、今はやってることが訳わかんなくなってきたね。自分のためだけに吹いてるみたいで。
中野 より難しくなってる。ジャズは構築してはいけない、みたいな(笑)
ーーでは『ナイト・ドリーマー』を聴いて好きになったからといって、容易に新譜に手を出さない方がいいですか。
織戸 ああ。それはしない方がいい。順繰りにいった方がいい(笑)。『ナイト・ドリーマー』は普通の人でも聴けると思うんだよね。そんなに拒絶反応は起こさない。ジャケットも、モダンな現代写真として素晴らしい。
中野 いわゆる今のコンテンポラリーモダンっていわれてるジャンルのジャズの人。先端は先端ですよね。インタビューで読んだんですけど、最近自分がやろうとしてることはディコンストラクション(脱構築)ということだって。要はアドリブってやってくうちにカタチが整うじゃないですか、そうなりそうになったらすぐに壊すっていう。
織戸 この人は頭の構造が変なんだよね(笑)。普通それじゃ訳わかんなくなって吹き続けられなくなるはずなんだよ。
中野 話がかみ合いそうになったら壊すっていうことですからね(笑)すごいですよ、それ。