織戸今まではビギナー用ということで、なるたけミュージシャンが重ならないように紹介してきたけど、紹介したアルバムが気に入ったらそのミュージシャンの他の作品も聴いてもらえるとありがたい。ここで紹介したものをとっかかりにいろんなレコードを聴くのがジャズの道だもんね。
中野 またそのサイドメンとかも追っかけたりして徐々に広がってくんですよね。
織戸そうそう。そうやって広げていくと、その人それぞれの好みが生まれてくる。同じジャズファンだって、僕と中野くんじゃ好みは変わってくるもんね。
中野 ジャズって言っても、ホント、幅広いから。どのジャズがいいとか悪いとかはない。
織戸そこが面白いよね。それで今回からはちょっと次のステージに。今までは大体バップからハードバップ、1950〜60年代初頭までっていう感じだけど、今日は1960年代の半ばくらいの雰囲気。
中野 フリージャズが入ってくる感じですか。
織戸時代的には入ってくるけど、これはビギナー用なので入れません。
中野 そうですね。そこを入れると拒絶反応が起きる確率が高くなる(笑)
織戸だからそれは将来の課題で、自分で辿り着いてください。おすすめ品としては、そこは出さない(笑)。ではまず、ジャッキー・マクリーンの『ニュー・ソイル』。けっこうジャズファンでジャッキー・マクリーン好きな人って多いよね。
中野 はい。で、次の段階っていうのも判ります。
織戸ジャッキー・マクリーンというのは、チャーリー・パーカーの弟子みたいな感じで、チャーリー・パーカーのスタイルをそのまま追ってた人なんだけど、この辺りでそこから抜け出して自分のスタイルを作り出そうとした感じ。いかにもジャズらしいイメージに近いんじゃないかなと思うけど。
中野 この辺の音は、最近、BGMとしていろんなお店で流れてる音ですよね。
織戸普通の人がジャズってイメージした時に、いちばんイメージしやすいサウンドだから。ジャッキー・マクリーンは、『レフト・アローン』やなんかで聴かせた掠れた音が、日本人の演歌のセンスと繋がるのかなぁ。泣き節のようなね。だからすごく日本人好みのアルトって言われてるんだよね。
ーーこれもおすすめということは名盤ということですか。
織戸そう。ジャズのレコードが何万枚とある中でも、最後に残るレコードの1枚。ジャッキー・マクリーンというのも大きな名前のひとりで、彼の代表作でもあるんだよね。このあとブルーノートで、ジョン・コルトレーンとか、オーネット・コールマンとか新しいジャズの流れを意識した演奏が続けざまに始まる。リバーサイドとかプレステッジとかいろいろジャズの専門レーベルがあって、それぞれにカラーがあって、その中でブルーノートは、ジャズの専門レーベルとしていちばん王道という雰囲気がある。
中野 ブルーノートだけ聴いてるという人がいるくらい、熱狂的なファンが多い。
織戸また、このブルーノートってジャケットの感じがいいんですよ。
中野 ですよね。一発でブルーノートって判りますよね。
ーーずっと同じ人がデザインしてるんですか?
織戸そう。フランシス・ウルフとかリード・マイルスとかね。ブルーノートは芸術家が集まったような集団なわけ。録音するプロデューサーも、ジャケットデザインも一流のアーティストが集まった。『ニュー・ソイル』も字のデザインとか写真のデザインとかの素晴らしさがある。ブルーノートのレコードなんかは、1枚1枚自分の部屋の飾るだけで、部屋のデザインになるね。
中野 ジャズ好きは、大体、飾ってますね(笑)ブルーノートには、ルディ・ヴァン・ゲルダーていう録音の名手もいる。85歳で、今も現役。
織戸今はCDの仕事をやってる。この人はアナログの代名詞だったわけだよね。録音技師として。その人が今はデジタルのCDでもセンスを発揮してる。
中野 ブルーノートの音っていうのがあって。それはヴァン・ゲルダーが作り出した音で。この人が録音エンジニアとして入ってるっていうだけで売れたりするんですよね。
織戸自分がカッティングしたっていう証明として、レコードにRVGっていう刻印がしてある。それがあるだけでコレクターにとっては価値があるわけ。