MILESTONE24時

中野俊成が18歳から通い続けていた
ジャズ喫茶『マイルストーン』の店主、織戸氏と共に
ビギナーに向けたジャズの名盤を紹介。
店が閉店した24時から花咲くジャズ談義を、余すことなく公開します。
MILESTONE 24H Vo.6

ビギナーの必聴名盤
その2


超絶テクニックのピアニスト
オスカー・ピーターソンのスタンダード作品

織戸 今回はまずオスカー・ピーターソン『プリーズ・リクエスト』から。ジャズにはものすごく前衛的なものとか難しいものがあるけど、この人はジャズのスウィングという基本があって、超絶テクニックで。ジャズファンみんなが楽しめるタイプのピアニスト。

中野 明るいですよね。

織戸 ジャズのエンターテイメントの王道を行く王様みたいな人。

中野 "鍵盤の皇帝"という異名がついてて、もの凄い超絶テクニック。

織戸 普通のピアニストの10倍くらいのスピードで弾いてるようなテクニックだよね。で、リーダー作を100枚くらい出してるんだけど、その中でもいちばん人気なのが『プリーズ・リクエスト』。「酒とバラの日々」とかボサノヴァ系の「イパネマの娘」とか誰もが知ってる曲ばかりをやってる。

ーースタンダードを集めた作品ということですか。

織戸 アルバムタイトルが日本では『プリーズ・リクエスト』だけど、原題は『We Get Requests』で、みんなからのリクエストを募ってその場で弾くという雰囲気なんだよ。だから誰もが知ってる、親しみやすい曲を選んでる。そしてこのアルバムではテクニックを聴かせるんじゃなくて優しく演奏してるんだよね。ただテクニックを聴かせようとしたら疲れちゃうけどね。

中野 全編ものすごく速弾きのものとかもありますね、『Walking The Line』なんてアルバムを聴くと指がどうなってんだろうってくらい、速い。


織戸 でもこれはすごくリラックスして聴ける。

中野 転がるようなピアノの音色がいいんですよねぇ。これと『ザ・トリオ』は本当によく聴いた。『ザ・トリオ』も超名盤ですね。

織戸 そうだね。これや『ザ・トリオ』なんかは、仕事から疲れて帰ってきてなにもしたくない時、ソファに座ってコーヒーでもいれてなんか聴こうかなぁという時にいい。そういう時にコルトレーンはかけない(笑)。


中野 疲れてる時はホーンセクションがない、ピアノトリオがいいですね(笑)特にこれは聴きやすいし、ジャズ初心者にもおすすめ。

織戸 最初に『プリーズ・リクエスト』を紹介すれば、ジャズファンになる可能性高いよね。

中野 僕、上原ひろみさんのソロを聴くとオスカーを思い出しますよ。速弾きとテクニックのすごさで。彼女もオスカー・ピーターソンを聴いてジャズピアニストを目指したらしいですね。


織戸 そうだね。ジャズピアノをやりたいと思うキッカケがオスカー・ピーターソンだったという人はかなりいるよ。

中野 今かかってる「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」の終わり方を、山中千尋さんが引用したりするんですよ。そんなとき聴いてるこっちは、ピーターソンを持ってきたなってニヤッとする(笑)。だからこういう名盤を聴いておくと今のジャズも楽しめるんですよね。

織戸 今の人はモードをやる人でも、昔の人のを勉強してるからね。みんなタイプは違ってもこんな風に弾けたらとどんなに素晴らしいかと思うんだろうね。

中野 今ピアノトリオは人気ですけど、この当時はそんなに多くはなかったですよね。

織戸 昔はピアノトリオっていうとオスカー・ピーターソン流のトリオが主流だったんだよ。今は『ワルツ・フォー』なんかのビル・エヴァンス派が多いけど、昔は『プリーズ・リクエスト』だった。ピアノトリオといってもいろんなタイプがあって、ピアノがメインになってベースとドラムスを引っ張るタイプがオスカー・ピーターソン。ビル・エヴァンスはピアノとベースとドラムスの三者がお互いの音を聴きながら演奏する。

中野 お互いが丁々発止する感じ。いわゆるインタープレイですね。

織戸 そうだね。


中野 話は逸れますけど、ピアノといえば、去年『100ゴールド・フィンガーズ』に行った時に思ったんですけど、同じ一台のピアノを使ってるのに、10人が全部違う音色なのは不思議だなぁと。弾き方が違うのは判るんだけど、同じピアノなのに鳴る音が違うってどういうことなんだろうと。

織戸 そうだよね。普通なら人間でも猫でも同じ音が出そうなものだけど。

中野 ですよね。でも音色が違うんですよ。

織戸 そこでもう無限の個性があるんだよね。

中野 去年はジュニア・マンスがリーダーで、他にはベニー・グリーンなんかも来てました。

織戸 今はあの辺がいちばんベテランかもしれないね。昔はハンク・ジョーンズとかいたけど。でもその10人と比べてもオスカー・ピータソーンのテクニックは図抜けてると思うよ。


ARCHIVES

Vol.1 ジャズの歴史をつくった天才たち
Vol.2 ジャズの歴史を彩る天才たち
Vol.3 モダン・ジャズを切り開いた黒人ミュージシャンたち
Vol.4 白人ジャズとアドリブの天才
Vol.5 ビギナーの必聴名盤その1
Vol.6 ビギナーの必聴名盤その2
Vol.7 ジャズ初心者から次のステージへ 1