織戸 最後はエリック・ドルフィーの『ラスト・デイト』。エリック・ドルフィーはこれを36歳の時に録音した直後、突然糖尿病で亡くなってしまった。だからタイトルが『ラスト・デイト』になって、最後にエリック・ドルフィーの言葉をいれて。
中野 あれは有名なセリフでしたね。二度と音楽は取り戻せない的な。
織戸 "When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again. "。訳すと、「音楽は空中に漂う。二度と取り戻すことはできない」というような言葉。
ーーそれはインタビューかなにかの言葉ですか?
織戸 そう。インタビューで言ったセリフをアルバムの最後につけた。そういうのもあってB面2曲目の「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」はマル・ウォルドロンの「レフト・アローン」と並んで愛されてる。この後死んじゃったんだなぁという思い入れもあるわけだから。
ーー「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」はオリジナル曲なんですか?
織戸 これはスタンダードナンバー。この人はアルトサックスがメインで、フルートとかバスクラリネットとか何種類もの楽器をやるんだけど、この曲でのフルートがまた素晴らしい。このフルートを聴きたくて、みんなリクエストするくらいだから。
中野 僕はピアノを弾いてるミシャ・メンゲルベルクが好きで。
織戸 中野さん、なにかでミシャ・メンゲルベルクのこと書いてたよね。偉い!僕も、ものすごく大好きで最もリスペクトする人。ミシャ・メンゲルベルクはセロニアス・モンクとかデューク・エリントンの影響を受けてる人で。
中野 僕はセロニアス・モンクも大好きなんですよ。
織戸 たぶんね、モンクを弾かせたら日本の渋谷毅とミシャ・メンゲルベルクがナンバー1じゃないかな。
中野 でもミシャ・メンゲルベルクは大メジャーかといったら、そんなにメジャーではないですよね。
織戸 全然。だって、このアルバムが出た時点では知らなかったもん。アメリカで活躍してるドルフィーがチャールズ・ミンガスと一緒にヨーロッパに演奏旅行に行ったんだよね。その時にひとりで行動することがあって、バックのメンバーがいないからと現地のナンバー1の人と演奏をした。それがミシャ・メンゲルベルクだから。
中野 僕はミシャ・メンゲルベルク・トリオの『ノー・アイディア』は愛聴盤の一枚です。ドルフィーの話に戻ると、ジャズでフルートというとハービー・マンもいますけど、他に有名な人はいますか?
織戸 ビル・エヴァンスとも一緒にやったジェレミー・スタイグとか。ドルフィーはフルートもいいけど、バスクラリネットをジャズのソロ楽器にした人でもあるんだよね。
中野 音楽性は、コルトレーンの影響を受けてますよね。
織戸 一緒に演奏してたから。でもエリック・ドルフィーはフリー一辺倒という感じではなかった。
中野 『アウト・トゥ・ランチ』は、フリージャズではないですね。
織戸 フリーまではいかないけど、音は斬新。やっぱり『アウト・トゥ・ランチ』を聴いた時は衝撃があった。
中野 『アウト・トゥ・ランチ』がいちばん好きなアルバムだっていう人も多いですよね。
織戸 そうかもしれないね。音も素晴らしいし、ジャズはこういうサウンドを作るまでになったんだという斬新なサウンドを作り上げてた。誰の影響も受けてない、ドルフィーにしかできないオリジナル作品だよね。エリック・ドルフィーがあと10年生きてたらジャズの流れを少し変わったかもしれない。そういう可能性のある人。この人がいたら、コルトレーンもフリージャズ一辺倒の世界にいかなかったんじゃないかなぁと思うね。
【取材・文=加治屋真美】



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