――そもそもこの対談企画を始めようと思ったきっかけは?
中野 自分のHPをリニューアルしようとしてた時に、「マイルストーン」のHPがあるのを知って、思い立った。店のイメージ的にネットとは無縁だと勝手に思ってたからそれまでは検索さえしてなかった。知ったのも、織戸さんが僕のやってる番組について書いてくれてたので、ヒットしたという偶然(笑)
織戸 ねぇ(笑)。こっちは知らなくて。『あらびき団』がすごい大好きで、日記にそのことを書いてたんだよね。
――『あらびき団』が繋いだ縁というのも面白いですね。
織戸 でも、こういう対談をしてもジャズを聴きたいという人がいるのかという心配があるんですけど、どう?
中野 いや、すごく増えてると思いますよ。巷にBGMとしてジャズは溢れてて潜在的に気にはなってるけど、知識がなくて何から聴けばいいのか判らないと思ってる人は多いみたいだから。
織戸 ほう。入り口が分かんないっていう感じか。
中野 知人からも「ジャズを聴きたいんだけど、何から聴いていいか判らない」なんて最近よく聞かれるんです。その背景があったからこそ、こういう対談企画も思いついた訳なんですけど。
――たしかに、ビギナー的にはどこから入っていいか判らないですね。
中野 他のジャンルと同様、ジャズも好きなミュージシャンを追っかけていけばいいんですけどね。僕はソニー・ロリンズから入ったんで、ソニー・ロリンズをずっと追っかけて、その流れでマイルス・デイビスとか、ジョン・コルトレーンなど、ジャズの巨人と言われてる人たちを一通り聴いて。そこからサイドメンへと徐々に広がってった。
――好きな作品のジャケットにあるクレジットを見て、そのミュージシャンのリーダー作を聴いていくという広げ方ですか?
中野 うんうん、それ。
織戸 あとね、レコード・ジャケットのいいものを買うとかね。そういう楽しみ方もある。
中野 ジャケ買いすること、いまだにありますもんね。勿論、当たりハズレはあるけど、それも含めて楽しみになってる。
織戸 今回の1枚目は、ジョン・コルトレーン。1回目で紹介した『カインド・オブ・ブルー』のテナーサックスだね。この人もジャズの歴史の中で重要な人と言われている。それでコルトレーンでいちばん有名なのがこの『マイ・フェバリット・シングス』というアルバムで。
中野 僕もホントこのアルバムは聴きました。
織戸 『マイ・フェバリット・シングス』というのは、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」のスタンダード・ナンバー『私の好きなもの』をジャズの素材として取り上げたもの。たぶんこれをジャズにしたのはコルトレーンがいちばん早いと思う。
中野 コルトレーンは好んでこの曲を何度も演奏してますね。
織戸 モダンジャズっていうのは、同じ曲であっても二度と同じ演奏はない。やるたびに変わっていくんだよね。だから常に違う曲をやるんじゃなくて、同じ曲を、その度ごとに演り続けるっていうのもジャズの方法論。
中野 これはオリジナル盤ですか。
織戸 そう、オリジナル。
中野 僕が持ってるのはオリジナル盤じゃないんだけど、こんなにも写真やジャケットの質感が違ってたのか。
織戸 昔は音楽をレコードで聴いたわけだけど、結局レコードっていうのは複製品でしょ。レコーディングした時はテープで、それをカッティングマシーンでレコードに溝を掘る。その時に、最初にテープでカッティングしたレコードが、いちばん直な音になってる。で、いい音でジャズを聴きたいという人は、その最初にカッティングしたものを欲しがるんだよね。
――それがいわゆるオリジナル盤というものなんですね。
中野 音の一番搾りですよね(笑)。
織戸 だからオリジナル盤にはマニアックな人たちが集まって価値がつき、10万円で取引されることもある。
中野 以前、ディスクユニオンで35万の中古盤を見かけたことがあった。僕はそういうマニアではないんで、買いたいとは思わないけど。
織戸 俺もレコードを買うのに1万円以上出したことはないね。
中野 1万円がボーダーラインになってますよね。村上春樹さんも1万円超えると買わないんですって(笑)。
織戸 それは価値観の問題だからね。レコードは複製品だから、骨董品のようなこれだけっていう一品ものじゃないわけ。それに対して30万円も出していいのかっていう倫理の問題なんだよ。
中野 確かに、踊らされてる感がありますよね。