ブルーノート東京のブランフォード・マルサリス・カルテット、2日目。カルデラッツォの代役、本日は小曽根真。いつものようにクレバーな演奏で、そつなくブランフォードらと絡み、安心感ある穴埋め。ブランフォードも昨日同様、素晴らしい演奏を聴かせたが、聴衆の心を鷲掴みにしたのは、ドラムのジャスティン・フォークナーだった。昨日にも増して、凄まじいドラムソロを展開して鳥肌モノ。ドラム脇の席だったせいもあって残像しか見えない程のスティックさばきに目は釘付け。まだまだ力任せなドラミングではあるが、この先経験を積めば手業は自ずと増える。恐ろしいルーキーが出現したものだ。彼がブレイクするのも時間の問題だろう。という訳で、今回のピックアップは小曽根真率いるThe Trioの作品。"The Trio"とはまた大胆なネーミング。野球で言えば、背番号3をつけるようなものだが、決してそれは傲りではなく覚悟なんだろうと思う。オープニングとエンディングを飾るタイトル曲の音は意味深な響き。ピアノトリオに真摯に向かい合った一枚。ドラえもんのテーマをジャズ化した一曲も収録。どうでもいいことだが、おそらく世界初。
ブランフォード・マルサリスのカルテットをブルーノート東京で観てきた。2006年以来、3年半ぶりの来日。自分的には前回公演を惜しくも見逃しているので実は初の生ブランフォード。曲によってテナーとソプラノを吹き分け、剛健さと繊細さの両面で魅了、特にソプラノの響きが心に沁みた。今、ブランフォードはソプラノに気持ちが傾いてるに違いない。ところで今回、レギュラーピアニストであるジョーイ・カルデラッツォの来日が遅れ、本日は08年のモンクコンペティション・ファイナリストの片倉真由子が急遽、代役を務め、きっちりとカルデラッツォの穴を埋めていた。特にカルデラッツォが作曲した叙情的な美曲「The Blossom of Parting」をどう料理するのか興味深く見守ったが、必要以上に日和ることなく片倉なりのソロを全うしていて感服。また、新たにジェフ・ワッツの後任として加わったという若干18歳(!)のジャスティン・フォークナーの体当たりの演奏にも驚いた。そのエネルギッシュさに力尽くでやられた感じだ。まだ現役のバークレーの学生らしいが、今後、どう変化していくか楽しみな逸材。アンコールではサプライズゲストとして客席から多田誠司が登場。どういう繋がりがあるのかは不明。あ、今回ピックアップしたアルバムは、そんなブランフォード・マルサリス・カルテットのピアニストという大役を担った片倉真由子のファーストアルバム。20代とは思えぬ確固たるタッチにホンモノを感じる。安心して聴ける名盤だ。
ヒップホップなどの融合でジャズを進化させようと意気込んでる感の強かった前作までのスコットとはまた違った顔を見せた本作。地に足ついたワンホーン・クインテット。メンバーは前作同様、ギターのマシュー・スティーブンスとドラムのジャマイア・ウィリアムス(グラスパーのバックでも叩いてたけど、この辺りが繋がっているんだなぁ、やっぱり)。曲のモチーフには人種的、政治的なテーマがあるようだが、個人的には、作り手は作品をゼロから生み出す場合には強い衝動というか動機が必要でそれが今作はたまたまそこにあったのかというぐらいの解釈。聴く側は作り手のモチーフに縛られる必要はないわけだし、純粋に「今」のジャズ作品として興味深く聴いた。ただ、メッセージ性が強いせいか、グループとしての世界観は以前よりもぐっと引き締まった。
最近はめっきりこの辺りの音がツボだ。マーカス・ストリックランドの真っ直ぐなサックスの音が無性に生で聴いてみたくなるライヴ盤。ここでなされる試みとして、ラップまでいかない「語り(Spoken Word)」が何曲かでインサートされる(Tokyo No.1 SOULSETのビッケっぽいかも)。このところ、ウィントン・マルサリスやテレンス・ブランチャードなどの新譜で、ボーカルとは異なる「人の声」を使った表現がなされてるが、NYで流行ってるのか(そういえばグレッチェン・パーラトの新譜でも自分の子供の頃の「声」を使っていた)。この辺りの趣向は好みが別れるところだが、個人的にはジャズの幅を広げる表現手法のひとつとして受け容れたい(音楽とは完全分離させたマルサリス『He and She』の朗読は別だが)。今作で気になったのはギターのマイク・モレノ。特にM5「Sneaky Deaky」では、モレノのスペイシーなギター音に、E.J.ストリックランドのバシバシ決まるドラムの音が切り込んできて気持ちいい。初リーダー作をリリースして話題のトランペッター、キーヨン・ハロルドも参加。NY行きたい。
SF JAZZ COLLECTIVE、2009年版。メンバーはジョー・ロヴァーノ(ts)、ミゲル・ゼノン(as)、デイヴ・ダグラス(tp)、ロビン・ユーバンクス(tb)という蒼々たる管楽器陣に、リニー・ロスネス(p)、マット・ペンマン(b)、エリック・ハーランド(ds)。何という豪華な面々。さらに毎年、ジャズレジェンドたちの一人をクローズアップしているが、今年は大好きなピアニストの一人、マッコイ・タイナー。内容はとにかくホーン・セクションが熱い(厚い)。アンサンブルによって没個性になることもなく、各自がゴリゴリと前に出てきて圧倒的な演奏を聴かせる。リニーも所々マッコイを意識したタッチを聞かせニヤリとさせる。ハーランドのノリも最高。過去、05年版、06年版、07年版、08版とどれもハズレ無しだったが、今回も大当たり。