正直言うと、目当てはブラッド・メルドーだった。メルドーが参加するアルバムということで手に取ったら、ドラムがアル・フォスター、ベースがロン・カーターという座組で、その取り組みのミスマッチ感にも興味をそそられた。肝心のリーダーは、初めて聴くサックスプレイヤー、エリ・デジブリ。サイドメンの七光りでスポットが当たった、あるいは戦略的にそうなるよう仕掛けたカタチだが、ここで実力が伴わなければ逆効果、一気に記憶の闇に葬られることになる。果たしてこのワンホーン作品は成功だった。昭和初期生まれのジャズ好きな方々が「彼には歌心がある!」と絶賛するようなプレイは、昭和40年生まれの自分にも突き刺さった。まだ30歳そこそこのデジブリの、オーソドックスでストレートな音は逆に新鮮。聴き終えてあらためてジャケ写を眺めるとその成功を確信してるかのようなデザインだった。蒼々たる面子の名前はクレジットだけで、文字通り明かりを抑えた部屋で照らされているのはこのサックスプレイヤーただ一人。スキンヘッドのテカリにも自信が伺える。この作品がキッカケで、近い将来、彼の音がハイパーマグナムサウンドにならないことを祈りたい。