「最年少」というキャッチコピーには、"その歳の割りには"というニュアンスを感じるし、大体、演奏が自分にフィットすればいいだけなので大前提として年齢をアピールされても関係ない。このエルダーが"若き天才"として大々的にPRされた当時も逆に興味を失ってしまったのだが、弱冠18歳でのメジャーデビューから4年。ジョシュア・レッドマンがゲストだということもあって、初めてエルダーのアルバムを購入してみた。脱帽。こんなにも巧かったのか。この新譜がリリースされたタイミングでブルーノート東京でも生演奏を聴いたが、ずっとその鍵盤さばきに目を奪われてしまった。1987年、旧ソビエト連邦のキルギス共和国生まれ。フル・ネームは「Eldar Djangirov=エルダー・ジャンギロフ」。過去作を遡って聴こうとは思わないが、今後はすべてチェックしてくに違いない。
ブルーノート東京で大西順子トリオを観た。井上陽介(b)ジーン・ジャクソン(ds)とレコーディングメンバーでのライヴ。今から15、6年前にMt.FUJIジャズフェスティバルで彼女の演奏に衝撃を受けて以来のファンで、去年、久しぶりに観た時は存在感に重みが増した気がした(勿論太ったという意味ではなく)けど、今回は角が取れて丸みを帯びた感じを受けた(これまた太ったという意味ではなく)。つまり今は変貌の過程にあるのだと思う。11年ぶりに発表された復帰第一作のこの作品もまたそう感じさせる一枚。長い長い沈黙はあの伝説のデビュー作『WOW』を聴いた時の衝撃を期待させてしまったが、7月の発売以来、二ヶ月ぶりに引っ張り出して聴いてみると過度な期待感がない分、素直に聴けた。やはり大西順子はいい。
東京国際フォーラムで開催された『東京JAZZ』で上原ひろみさんのライヴを鑑賞。神がかりな指さばきで奏でるソロピアノ。すべての音の音色が粒立っているのにも驚くしその音数の多さにも驚く。「シーツ・オブ・サウンド」と称されたのはコルトレーンだが、彼女の細密な点描画のような音世界はそれを凌駕する。関係ないが、MC中に会場にいた子供が唐突に「ダメ」と声を発し、それに対し素早く「ダメ?」と反応した彼女。その"間"は紛れもない一流芸人の"間"と同じで、会場もその"間"に笑わされていたが、そんなところにも天才に備わる本質を突くタイム感が顕れてるように思う。終演後、バックステージでご本人に挨拶。あの凄まじい演奏からは想像できない穏やかでおっとりとした人柄だが、放つオーラはやはり凄まじいものがある。この初のソロアルバムは彼女によれば二十代の終わりにまとめたマイルストーン的な作品らしい。今後、三十代の終わり、四十代の終わり、と10年毎のありのままの姿をソロというカタチでリリースしていきたいと話しているが、そういった意味でも必聴盤、いや必携盤だ。
丸の内のコットンクラブでジョン・ピザレリのライブ鑑賞(09.6.17)。構えることなくリラックスしながらギター&ボーカルを堪能。中でもアメリカの有名歌手をモノマネしながらのメドレーがとても楽しく。ブルース・スプリングスティーン、ビーチボーイズ、ビリー・ジョエル、ルー・リード、フランク・シナトラなどなど。特にビリー・ホリディの歌マネはツボを突いてて思わず声を出して笑ってしまった。実にショーマンシップ溢れるステージング。そんなピザレリのステージに通じるポップな一枚がコレ。タイトル『ティア・ミスター・コール』から、つい名作曲家のコール・ポーターを連想してしまうが、ナット・キング・コールのことらしい。ギターとピアノ、ベースというドラムレスの構成はナット・キング・コール・トリオと同じ。こちらのピアノはベニー・グリーン、ベースはクリスチャン・マクブライド。文句無しの名手。選曲もナット・キング・コールが好んで取り上げた有名スタンダードばかり。ざっと挙げると...「On the Sunny Side of the Street」「Route66」「L.O.V.E」「Unforgetable」「It's Only a Paper Moon」「Honeysuckle Rose」等々...って全18曲がどれも名曲!ビギナーがスタンダードを覚えるのに最適な一枚かも。ちなみに、このジョン・ピザレリ。7弦ギターの名手であるバッキー・ピザレリを父に持ち、姉もジャズ・ギタリスト。やっぱり、環境が才能を育てるのだ。
6月7日に五反田ゆうぼうとで開催された『100 GOLD FINGERS』を観た。ベテランから若手までジャズピアニスト10人が一堂に会すという豪華な公演も今年で11回目。人数が多いので1人につきたったの2曲という物足りなさはあるものの、約3時間で蒼々たるメンツの演奏を生で体験できるのだから贅沢だ。何といっても10人が入れ替わり立ち替わりリレー演奏したアンコール「A列車で行こう」が圧巻。ピアノを弾く者以外は後ろに横一列に並び手拍子をしながら演奏を見守る。なんという豪華な演出。てか、こっちが申し訳ない気持ちになった。で、ベニー・グリーン。彼の演奏を生で観たのはこの時初めてだったのだが、それを機に久々にこの作品を引っ張り出して聴いた。ギターのラッセル・マローンとのデュオ。派手さはないが地味にイイ作品。シンプルなジャケットはこの作品のイメージにぴったり。2004年リリース。愛聴盤。