ここ数年、頻繁にライブに足を運ぶようになって、めっきりライブ盤が好きになってしまった。ジャズの本質が即興性にあるとすれば、ライブ盤はその最たるもので、特有の臨場感も含めて奇跡の記録と言える。アフリカはカメルーン出身の天才ベーシスト&ボーカリスト、リチャード・ボナの初のライブ盤がコレ。彼のライブは昨年、ブルーノート東京で初めて観たが、かなりのエンターテイメントぶりに驚いてしまった。弾むベース、そして透き通るようなボーカル。最も感激したのはアンコール。たった一人でステージに戻ってきたボナがおもむろにアカペラで歌い出し、ボイスパーカッションやボイスベース、さらにはコーラスもその場で次々に多重録音していき、最後はたった独りで創り上げた声の伴奏&コーラスをバックにボーカルを披露して完成。その間、一度も途切れることはなかったのだ。このアルバムでも4曲目にその様子を聴くことが出来る。「Samaoumaサマオウマ」。ただ、コレはやっぱりライブの映像で観ないとその凄さ(楽しさ)は伝わらない。
ブルーノート東京にて、Dee Dee Bridgewaterのライブを鑑賞。以前、同ライブハウスで観たリチャードボナもそうだったが、黒人の特権的才能ともいうべきリズム感に心酔し、時折、繰り出す管楽器のごときスキャットに唸る。その上、底抜けに明るいエンターティナーとあって、最後はライブ会場内総立ち。久々に楽しい時間を過ごさせてもらった。昨年リリースされたこのアルバムは、そんな彼女が自身の原点であるアフリカ回帰を試みた作品。ジャズとアフリカ音楽の融合。今回のライブでもそれが披露されていて、至福。タイトルの「RED EARTH」とは、故郷のマリに広がる大地の赤土の色らしい。民族音楽好きにはたまらない一枚。
「俺は老カウボーイ」の飄々とした演奏から始まるこの作品。歴史的大名盤『サキソフォンコロッサス』と肩を並べるロリンズの代表作。同時にピアノトリオというスタンダードなバッキングをやめ、ベース(レイ・プラウン)&ドラム(シェリー・マン)だけで録音を試みた記念すべき一枚でもある。ロリンズはこれ以来、ピアノレスという、コード楽器にアドリブを制限されない座組で次々と名演を世に送り出すことになる。今年(08)の来日公演『JAPAN TOUR '08 "I'm Back"』もやはりピアノは置かず、ドラム&ベースの他にはギターとパーカッションを配置し、溌剌とした演奏を繰り広げていた。東京国際フォーラムで開催されたそのコンサート、幸いにも前列2列目の中央席、ステージからわずか数メートルという至近距離で観ることが出来たのだが、あんな風に力を抜いて自然にテナーを吹くサキソフォン奏者を未だかつて見たことがない。まるで、テナーを使ってただ呼吸しているだけのような吹き方。まさに達人、いや、仙人の域だ。彼にとってテナーを吹奏するということは、まさしく呼吸することに等しく、観客はロリンズの息遣いに引き込まれ、心を震わされているのである。つまり、ロリンズの"生命の営み"に感動しているのだ。このアルバムは今から51年前、26歳だったロリンズの自然な息遣いが吹き込まれている傑作。[1957年録音・ CONTEMPORARY]
大御所ピアニストと新進気鋭ピアニストの邂逅が生み出した奇跡のライブ盤。昨年(07)、ブルーノート東京で行われた演奏を二枚のCDに収めてあるのだが、もうこれは歴史的名盤として今後伝承されていく類のアルバムだ。上原が超絶テクで奏でる縦横無尽な即興と自在に呼応するチックの懐の深い演奏。とにかく張り詰めた緊張感が凄まじい。だからといって決して息の詰まる堅苦しい演奏という訳ではない。リラックスしながらもハイテンション。表現する上で最も理想的なコンディションだ。特典DVDに収められたライブの様子を観るとそれが体感出来る。先日(08.4.30)の武道館コンサートも素晴らしかった。大きな会場にも関わらず、観客をぐっと引きつける丁々発止な連弾に、自分は今、まさにジャズの歴史に立ち会っているのだという喜びと興奮を味わった。初心者向けの作品ではないが、ジャズの醍醐味を知りたいならば、恰好の一枚。[2007年録音・Universal Music]
日本ではこれがデビューアルバム。CDの帯には"スタイリッシュな超豪華ビッグバンド・サウンドにのって、トロント生まれの伊達男、マット・ダスク登場!"とある。確かに、相当な伊達男。甘いマスクに、申し分ない歌唱力。フランクシナトラの再来と謳われるのも納得。でも、笑っちゃうのだ。あまりにも美味しい料理を口にするとつい笑みがこぼれてしまうように、これほど歌いっぷりがカッコイイと笑ってしまう。昨年末(07)に、ブルーノート東京でのライブを観たのだが、そのナルシストなステージングにはやはり笑ってしまった。大物の予感。要注目のジャズボーカリスト。ただただカッコイイ。[2007年録音・BMG]