ジャズボーカルにすり寄ることなく、ジャズをすっぽりと自分の歌に取り込んでしまった美空ひばり。中でもスタンダードナンバー「A列車で行こう」が出色の歌唱。とにかくスキャットがスゴイ。「日本人のスキャットを聴くとゾッとする」と辛口なことを言う知人がいて、ならば美空ひばりの"A列車"もそうかと聞いたら一度も聴いたことがないという。失格。回転寿司のウニしか食べたことないのに「ウニは生臭くて嫌い」と判った風なことを言うのと同じだ。ちゃんとした寿司屋のウニはこの上なく旨い。話が逸れた。美空ひばりという歌手は、やはり生来"スイング"している稀代の天才なのだ。日本人にスキャットが無理なのではなく、つまりは歌い手の資質の差。世の中にはこんなに旨い本物のウニが存在するのだ。ナットキングコールを歌った『ひばりジャズを歌う』も、旨い。[1990年発売・日本コロンビア]