ジャズの巨匠、ハービーハンコックの新譜はなんとボーカルモノ!イマジンプロジェクトと題されたこの作品、コンセプトが"地球規模の平和"と謳われていて、そう言われるとどこか宗教じみた胡散臭さが漂ってしまうが、内容は一切そんな匂いは皆無。音楽のジャンルを超えたグローバルなボーカルアルバムに仕上がっている。冒頭、このアルバムのコンセプトにもなっているだろうジョンレノンの「イマジン」から始まるのだが、この一曲だけで名盤を予感させ、一枚を聴き終える時にはそれは現実となった。今年これを超えるボーカル作品は何枚出るだろうか。個人的にはジョンレジェンド他何人かを除いて初めて聴くボーカリストが多かったが、全員今後も追いかけたくなった。
いやぁ、引っ越しやら番組の改編期やらで忙殺されていて長らく更新が滞っていた。これからこまめに更新していこうと思う。さて、滞っていたといえば、ジェイソンモランの新譜も随分と滞っていた。実に4年ぶりのリーダー作。最近出たポール・モチアンの新譜でも緊張感あるプレイを聴くことが出来るが、やはりモランはリーダー作が聴いてみたいピアニストの一人。ディスクユニオン新宿店で目にした途端、試聴もせずに迷うことなく購入してしまった。たとえ駄作だとしてもこのピアニストの歴史に立ち会っておこうという覚悟が自分にはある。はたしてモランの新作は実に傑作だった。タイトルの『TEN』は自身のトリオ「ザ・バンドワゴン」(ベース・タラス・マティーン、ドラム・ナシート・ウェイツ)結成10周年を意味するようだが、長年培った阿吽のインタープレイとスリリングな演奏に、相変わらずの複雑なリズムと構成にも関わらず、ぐいぐい引き込まれ、すっかり聴き入ってしまった。まさしくジャズの現在を体現するアーティスト。必聴だ。
パット・メセニーとの共作が続いてたブラッド・メルドーの4年ぶりのスタジオ録音盤がすごいことになってる。ラリー・グレナディア&ジェフ・バラードのレギュラートリオは勿論のこと、盟友ジュシュアレッドマンを迎えたカルテット、さらにマット・チェンバレンが加わったツインドラム、そして壮大なオーケストラ演奏!と実に多彩な座組の中で、メルドーとジョシュアが鳥肌モノのインプロを繰り広げる。「旅」をテーマにした組曲らしいのだが、旅の紆余曲折を一本のタイムライン(Twitterっぽい)にまとめ上げたのは、二度目のコラボとなるプロデューサー、ジョン・ブライオンの手腕に拠るところが大きいのかもしれない。前コラボ作(「ラーゴ」)はちとオーバープロデュース気味だったので今回もちょっと嫌な予感がしてたのだけれど同じ過ちは繰り返さなかった。過ちじゃないか。最近、「ベサメムーショ」など日本人好み(と思い込んでいる)スタンダードを演らせたり、オーディオ用の音にこだわったりすることがプロデューサーの仕事だと思い始めてたので、こんなクリエイティビティに満ちた作品を聴くとそれは間違いなのだと気付かされる。とにもかくにも、ブラッド・メルドー、新境地に達す。
ブランフォード・マルサリスの09年にリリースされた『Metamorphosen』がこのカルテットのひとつの到達点だったに違いないが、これを機にレギュラードラマーがジェフ・テイン・ワッツから若干18歳のジャスティン・フォークナーに交代し、来日の時に聴かせた新生カルテットの演奏は新たな未来を孕んだものだった。ジョーイとレビス、そしてブランフォードが身を乗り出して「コイツはまだ荒削りだけどホントにすごいヤツだよまったく」とでも言わんばかりの様子でそのパワフルなドラムソロを注視していて、おそらくこのドラマーの可能性にかけるメンバーの期待は相当高いに違いない。そんなグループの実態が垣間見れるライブはやっぱり愉しい。今回、ピックアップしたアルバムは、ブランフォード・マルサリス率いる前カルテットを中心に、ウィントン、エリスなどマルサリス・ファミリーが一堂に会した贅沢な作品。『Metamorphosen』の一作前になる2003年録音盤で、ドラムはワッツ。ジャズを愛した画家ロメール・ベアデンに捧げられた企画盤で、伝統的でノスタルジックなジャズとコンセプトワークから、とてもウイントン的というか、やはり二人は兄弟なのだなぁと実感させるというか、まぁ、ブランフォードの中では異色作だが、個人的には愛聴盤。この録音時、家族の身内のソロを見守る様子はどうだったんだろうか。
ブランフォードマルサリスのレギュラーカルテットが3年半ぶりに来日。スケジュールが合う限り出来るだけ見に行こうと数ヶ月前から意気込んでいたこともあって4ステージも観た。が、肝心のジョーイ・カルデラッツォの来日が遅れ、レギュラーカルテットの演奏が観れたのは1回のみ。でもその代わりにこの「断片」でもピックアップした片倉真由子、小曽根真、大西順子という日本トップクラスのピアニストたちとの共演を見ることが出来たのはラッキーだった。そんな訳で、今回のアルバムは、ブランフォード・マルサリス・カルテットのレギュラーピアニスト、ジョーイ・カルデラッツォの『俳句』。決められた文字数の中で詠む俳句というのはある意味、コードとジャズの関係にも似ているのだなとあらためて思うのだが、それにしてもカルデラッツォの音は何故こんなにも透明感があるのか。しかもオリジナルには本当に美しい曲が多い。そんな彼の魅力が詰まったピアノソロ集。